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●滋賀県近江八幡市・和歌山県海南市黒江での交流会
 
 

報告2:近江八幡・和歌山黒江への交流会の旅 報告:堀内寛晃

■はじめに

 「よこはま洋館付き住宅を考える会」は横浜国立大学小滝研究室と共同で調査を行ったメンバーを母体とし平成11年4月に設立され、横浜の都心周辺部に現存する大正後期から昭和初期に建てられた「一間洋館付き住宅」及びそこで行われていた生活風景について調査・研究し、かつそれらを題材にして楽しむことで現代の日本における住まいの環境や生活における様々な問題点を見つめ直し、今後の我々のライフデザインの創造につなげていこうという主旨のもとに、横浜市民を中心としたボランティアメンバーにより活動してきている。
 今までの経緯の中で、その活動の対象地域も、保土ヶ谷区・鶴見区・神奈川区・磯子区といった当初の地区から、西区・中区・南区、さらには鎌倉といったその周辺地区まで範囲が広がってきており、また、他地域の同じようなテーマのもとに運営されている団体との交流も会の重要な活動と考え、これまで東京都内の建築再生グループとの交流なども行ってきた。
 当会では会のそもそもの発端である「一間洋館付き住宅」が戦前における大都市郊外の住宅地に多く建てられたこともあり、これまで東京、横浜、横須賀等の大都市の後背地である横浜市周辺部にその活動の中心を置いてきた。 しかしまた今日の我々の住環境及び都市空間を取り囲む状況には様々なバリエーションがあり、またそれらを保全・再生していく際にも地域の違い、人の違いなどによって、そのケースごとの多種多様な問題点があり、さらにはそれらを乗り越えるための方法、その団体ごとのノウハウが存在しているはずである。
 我が国において住空間・都市空間における生活・文化遺産の保存活用問題が浮上してきたのは今から約25年程前、1965年頃からだと言えるが、それ以来数々の実績が積み重ねられてきており、社会の側にもある程度の共通 した認識のようなものが生まれてきているとも思われる。が、現状を見ると地域によってそれらがうまくいっている所があれば、未だに問題を抱えつつ、しかしにもかかわらずなんとか市民の手で状況を変えようとしている所もあるのが事実である。特に地域全体の一元的高齢化が進んだり、昨今の経済状況の落ち込みによって街の風景が為すすべもなく変わっていっている所もあり、そのような状況をどうするかが今地域の環境を守っていく上で一番必要とされている点であるとも言えよう。
 以上のような点を考える上で非常に参考となる地域として、またそのような問題に果 敢に立ち向かっていっている活動団体として、今回は二つの地域の二つの団体を特に取り上げ、それら団体との交流を目的として交流会を企図した。そのひとつが滋賀県近江八幡市の、ヴォーリズ設計の郵便局を地域の記憶やコミュニティの保全の中心施設として再生していこうと目論んでいる「特定非営利活動法人ヴォーリズ建築保存再生運動一粒の会」(以下「一粒の会」)、もうひとつが和歌山県海南市の黒江地区を対象に街づくりを行っている「黒江ワイワイ連絡協議会」である。

■滋賀県近江八幡市を訪ねて

 一粒の会について 一粒の会は近江八幡市に残るウィリアム・メレル・ヴォーリズが大正10年に設計した旧八幡郵便局を保存再生し、近江八幡市のコミュニティの核として、また当地発の情報をを全国に発信する拠点として活用していこうという団体である。

『私達「一粒の会」は、全国のヴォーリズファンとともに、旧八幡郵便局舎の保存再生運動を展開することによって、ヴォーリズが私達に残し、語りかけるものを後世に伝 承することを目的とする組織である。』(一粒の会パンフレットより)

ヴォーリズ像(近江八幡市)
ヴォーリズ像

■近江八幡と一粒の会の現状

 ヴォーリズの建築は彼が本拠地としていた当近江八幡市だけで、26棟が現存している。もともと近江八幡市は中世よりの歴史がある旧都で、伝統的建造物群保存地区(伝建地区)も市内に存在するなど、古くからの伝統的な町並みを生かす町づくりを先駆的に行ってきた地区でもある。全国に先駆けて八幡堀の周辺の環境を守る活動を始めたりした地域でもある。近江商人の本拠地として栄えた伝統や経済的基盤の厚みがそれだけ在在しているということだが、そのような地域にさらにキリスト教のコミュニティを築こうとしたのがヴォーリズである。彼の試みはある程度地元に根付いたようで、今回の交流会でもヴォーリズ一族の近所に住んでいたというある人物のとても貴重な、温かい話を聞かせて頂くことができた。
 一粒の会の活動の中心になっている当の八幡郵便局も、建築主であった小西梅三氏はヴォーリズの八幡商校の教え子であり、現在の当主の小西眞氏に代が移り変わっても、その記憶は大切に引き継がれているであろうことが感じられる。
 つまり局舎の建物氏から一粒の会への無償提供という形をとっており、それどころか年会費を逆に会へ払っているということである。この点は近江八幡の文化的な層の厚みをうかがい知ることができる点だと思われる。

■交流から思われたこと

 そのような比較的恵まれた状況にある旧八幡郵便局の保存再生だが、そのような有利な点を今後どのように活かして行かれるのかということが思われた。つまり当日案内をして頂いた会の嵐孝雄氏からも「ひとまずとても手をつけられないひどい状況から始まってこのようになったが‥‥」というお話があった。であるから、会のモチベーションとなるようなある一つの目指すべき軸、あるいは活動の方針というものを今後保ち続けるのには苦労しておられるようだ。
 市民活動という多種多様な人々が集まり活動するスタイルでの運動は今後重要性をますます帯びてくるであろうが、上手くいくためには、メンバー各自が運動の推進力になるためにも、会の中での動機の共有することが必要であり、会自体が閉鎖的になるのを避けなければならないからである。その為にも、広くその会の状況を外部へ伝え、その目的と目指すべき方向をきちんと確認し、それが達成できたり、また到底そこまで行き着くことができないと感じたならば、その次のアクションを早急に考えるべきだと思う。

近江八幡の町並み
近江八幡の町並み

■おわりに

 以上のような問題点はその翌日に訪れたもう一つの地域、黒江地区の現状を見てきたからかもしれない。こちらの方は打つ手がないまま、周りの状況のみが変わっていってしまっており、最近建物を取り壊しさと思われる空き地が目立ち、町の人や観光客もいず、少し寂し気な町であった。それに比べて近江八幡の状況は今後採りうる方法がまだまだたくさん残されており、実験的手法も多く開発できるような余地があるのではないだろうか。そのような試みを通 じて建築的遺産を再生活用していく上でのあるひとつの素晴らしいモデル、理想的状況を作り上げてほしい、というのが近江八幡、八幡郵便局舎を見学し、会の方々と交流して持った感想である。
 今後も会のメンバーの為にも、近江八幡市の為にも、また全国でがんばって活動している他の団体の為にもぜひ今後も有用な活動を続けて、「一粒の会」発の創造的な再生の手法、活動内容を発信してほしいものである。逆にいえばそのような活動が我々の会にも求められているということでもあるが。

海南市黒江の町並み
黒江の町並み

 
 
 

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