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<居住者の支援>
 
プロジェクト・レポート3
T邸実測調査レポート
かねてより会の活動趣旨にご理解をいただいており、内部をたびたび見学させていただいていた横浜市神奈川区のTさん宅を、2002年8月16日から17日にかけて実測調査しました。
この調査は、保存修復工事計画を立てる上での基礎調査であり、今回も調査に協力していただいた関東学院大学黒田研究室のメンバーと一緒に改修計画の作成までを行って行く予定です。
報告は実測調査初体験の菊池邦子さんです。
 
 
 

報告:菊池邦子

 2002年8月17日(土)、連日の猛暑もほんの少し弱まったお盆休み最後の土曜日。実測調査に初めて参加させて頂いた。大正から昭和初期の住宅がとにかく好きで、「洋館付き住宅」という文字を見ただけで正会員になることを即決してしまった私だが、実測調査は生れてはじめて。何を準備したら良いかも分からず、筆記用具、メジャー、方眼紙を持って、とにかく集合場所のお宅へ伺う。
 調査依頼を受けたT邸は昭和8年に建てられた洋館付き住宅で、現在も姪に当る夫人一家が住まわれている。今回は洋館の出窓部分の痛みが激しいので修理をするに当って、新築当時の姿に修復したいという夫人の要望で実測を行うことになった。
 この家はアメリカに住んでいた叔母様ご夫婦が帰国後建てられたもので、普請を請け負った大工の棟梁もアメリカ帰りという、なんともハイカラな生い立ちの家だった。南向きの玄関を挟んで向かって左に一間の洋館、右に和室6畳と8畳の続き間に広縁がある。この70年の間に、増改築や補修を行ったので元の間取りとは違ってきているが、以前は中廊下を挟んで台所や浴室、便所などの水回り、それに女中部屋があったそうだ。8畳強の洋館にはアールデコ調のフロアスタンドや猫足の応接セットが置かれて、当時の暮らし振りが想像できた。アールのついた白い天井に施された葉っぱのレリーフが繊細で美し い。


▲アプローチ

 今回も関東学院大学黒田研究室の学生さん達と一緒に実測調査を行うことができた。すでに実測調査を何度か経験し、要領を心得ている人も居て心強い。調査は一日目の16日(金)午後に主力メンバーによって事前調査が行われていて、実測調査に不可欠の平面 図、断面図、屋根伏図の粗描きが出来ていた。
 二日目の作業は、それを基に、立面図、展開図、天井伏図、構造伏図(基礎伏図、床伏図、小屋伏図)を描き、寸法を測って記入していくこと。同時に下げ振りや水盛り用パイプで、家の水平、垂直を診る。YYJKの兼弘氏が参加者の経験や所属などを聞きながら、各人の担当を決めていく。私は関東学院の構造研究室の滝田さんと一緒に構造伏図を担当することになった。
 基礎や土台の状態、小屋組を見るには床下や天井裏に潜らなければならない。そこで困ったのは着替えなど一切持ってきていないことだった。埃まみれになるのはいいが、帰りにその姿で電車に乗ることを思うといささか逡巡してしまう。そんな時、T夫人が息子さんのTシャツとタオルを貸してくださった。本当にありがたかった。
 身支度が整ったところで、玄関の前室の畳を上げて床下へ。潜るとすぐ目の前の柱の根元に鉛筆書きで「○○32 July 1st SAKAMOTO」とある。「これは棟梁が書いたものでしょうね。アメリカ帰りの人だっていうし。」とT夫人も加わって、暫しこの家のルーツを辿る。滝田さんは段ボールを敷いてさらに床下の内部へと這って行く。この頃の住宅は人が通 れる位床が高く造られているが、それでも基礎や束柱、根がらみを避けて進むのは大変だ。体中土埃で白くなってしまった。

 
▲(左)発見した棟札に職人の名前(右)床下の落書き

 昼食後は天井裏へ。高いところへ登るのが好きという滝田さんは天井板をはずし、松丸太の梁が掛る小屋裏へすいすい登って行く。兼弘氏は「怪我してもいいけど、家にちょっとでも傷つけたら困るよ」と言いつつ下を通 過。もっともと納得。内部からでは分からないところは外回りを一周してチェック。概略が分かったところで図面 に書き込む。そうこうする内に作業のまとめに掛る時間になった。皆、自分の担当部所を黙々と測り、図面 化していたが、それを最後にまとめて並べてみると一軒分の調査図面が出来上がっていた。これを基に黒田研の方々がCAD図面 を作成する。午後には差入れを持って黒田先生も来て下さり、調査にも授業の雰囲気が漂う(?)。

 
▲(左)洋館と玄関部分(右)洋館の窓内部より

 パートナーの滝田さんのお蔭で、私もなんとか担当部所を務めることができた。初めて実測に参加させて頂いて感じたことは、柔軟体操をして体を柔らかくすること、調査道具には着替え・長袖のシャツ・タオル・懐中電灯・虫除けスプレーを用意することでした。次回からは抜かりなく行きたいと思います。
 今回は現在も住んでいらっしゃるお宅の実測だったので、住人のT夫人を始め隣にお住まいのご両親に大変お世話になりました。本当にありがとうございました。「住まいは生き方」と言われますが、T邸は住む人の人柄が感じられる良いお家でした。

<実測調査参加者>

  • 1日目:2002年8月16日(金)午後2時〜6時
     関東学院大学(秋山 関口 塚田)
     YYJK(兼弘 島田 越智)
  • 2日目:2002年8月17日(土)午前9時〜午後5時
     関東学院大学(黒田 関口 塚田 土屋 小牧 加藤 滝田)
     YYJK(平山 兼弘 越智 畑 河野 菊池)

※レポートの内容は2002年8月現在のものです

居住者の支援・プロジェクトレポート│3│
 

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