■洋館付き住宅とは…
「サツキとメイの家」として「愛・地球博」(愛知万博)で再現された、「となりのトトロ」の舞台にもなった住宅のことです、というと、多くの方が、「ああ、あれか」と思われるのではないでしょうか。 |
1920年代(大正から昭和初期)、全国の都市に数多く建てられた和風住宅の玄関脇に小さな洋館(洋間・洋室)がついた建物が洋館付き住宅です。当時は文化という言葉がはやり、一般に「文化住宅」とも呼ばれました。(「洋館付き和風住宅」「近代和風住宅」といった言い方もされます) |
明治時代、外国から渡ってきた技術で建てられた西洋館は、横浜、神戸、函館などの開港場から全国に広がっていきました。そして大正から昭和にかけて拡大したサラリーマン層を中心に和洋折衷のライフスタイルが普及し、一般の住宅にも西洋館の影響を受けた建物が建てられるようになりました。現代の戸建住宅の原型となる「洋館付き住宅」の登場です。 |
この洋館付き住宅は、建築史の分野では「中廊下型住宅」または「和洋併設型住宅」と呼ばれており、全国各地に多く分布しています。 |
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■洋館付き住宅のさまざまな表情 |
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左:平屋和館に付いている洋館の外壁はモルタル掃き付け櫛引の手が込んだ仕上げで、台形出窓が映えます。
右:奥まった敷地の手前に一番目立つように建っています。和風屋根、モルタル掃き付け外壁、縁取り洗い出し、出窓付きの端正な洋館部。 |
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左:こじんまりと洋風玄関が付く総カラーモルタル仕上げの建物。珍しく和館北面も同じモルタル仕上げで、屋根瓦は丸みのあるエンジ色洋瓦葺き。
右:大規模で豪壮な和館に全面洗い出し外壁と雨戸式鎧戸のノッポな総2階建て洋館が付属しています。 |
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左:石綿スレート葺きの珍しいマンサード屋根の洋館は、大きな庭木に隠され、2階建ての和館に届きそうです。
右:2階建て和館の大屋根に組み込まれた素敵な洋風玄関と出窓が付く典型的な和洋折衷式住宅。 |
※イラストは『洋館付き住宅の魅力がわかる本』より |
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■洋館付き住宅の特徴
◎目を引く洋館の屋根と棕櫚 |
南国を思わせる棕櫚と急勾配・切妻・洋瓦のスカイラインが、ゆったりとした住宅地の中にあって、時の流れと時代の憧れを伝えてくれます。
オレンジや青、緑のフランス瓦やスペイン瓦と呼ばれる洋瓦がいぶし銀の和瓦の中に点在する様は、建ち上がった時、ことに人目を引いたことでしょう。
外壁は下見板張りにペンキ、モルタル塗り、スクラッチタイルが貼られることが多かったようです。
この洋館部分は、応接間や書斎として使用され、椅子やテーブルが置かれていました。台所や浴室の設備は近代的でしたが、居間や寝室は和室でした。
◎窓の表情 |
出窓や上げ下げ窓、鎧戸(よろいど)は、西洋風の意匠を強く感じさせます。
結晶ガラスは模様が型押されたもので、桟組みと合わせたデザインは個性的な表情をしています。寸法の大きなガラスがまだ非常に高価であった時代の、広く光を取り込む工夫です。
ガラスと桟はパテでしっかりと押さえられており、大風の時でも音は小さく、雨がしみることもありません。しかし、現在ではパテの補修ができる職人が少なく、維持が難しくなりつつあります。

(左から)出窓、上げ下げ窓、鎧戸
◎洋館内部 |
応接室や書斎に使われていた洋館の内部は、天井が高く、壁は白い漆喰で塗られています。床は寄木張り。
天井からはシャンデリヤやカットされた磨りガラスや色つきガラスの笠がかかった電灯が下がっており、ラジオ、扇風機、蓄音機などの電化製品が置かれていました。
◎中廊下型プランが大半 |
和風住宅の玄関脇に洋館(洋間)がついているのが洋館付き住宅の特徴です。
玄関を入ると日当たりの良い南に面して洋館があり、中廊下に続くというパターンが多いのですが、時には縁側に続く場合もあります。中廊下型プランは、それまでの日本家屋と比べると、各部屋の独立性が高くなっています。
廊下の先には、南面して二間続きの座敷があり、北側に台所や女中部屋、洗面 、風呂、便所が並んでいます。 座敷は床の間のある客間と、台所に近い茶の間に使い分けられています。
この頃から、ちゃぶ台を囲んで家族が一緒に食事をとるようになりました。食後は脚をたたんで片付け、布団を敷いて寝ていました。
また、このころに、わが国でもガスと水道の普及が進み、立動式の台所や外釜方式の風呂など近代的な住宅設備が備えられていました。
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