よこはま洋館付き住宅を考える会*HOME よこはま洋館付き住宅を考える会*サイトマップ
 
 

よこはま
洋館付き住宅を
考える会

 
 
 
洋館付き住宅について
洋館付き住宅とは
洋館付き住宅の魅力
昭和の生活用具
会の活動について
活動の目的と内容
入会のご案内
Topics
催し物のご案内
リンク集
Contents
HOME
E-mail 
 
 
Contents 会の活動について 活動の目的と内容 他都市との交流
 
 
●滋賀県近江八幡市・和歌山県海南市黒江での交流会
 
 

報告4:和歌山黒江を訪ねて 報告:石井文乃

 和歌山県海南市黒江の現地調査と現地の町並み保存・再生グループである「黒江ワイワイ連絡協議会」のみなさんと交流を深めました。
 黒江地区は海南市の北西部に位置し、徳川時代に黒江塗りの産地として発展した漆器職人の町です。今も当時の面 影をとどめた切妻屋根に紀州連子と呼ばれる格子や漆喰壁のある低い二階建ての屋根がノコギリ歯状(雁行)に立ち並んでいます(下の図と写 真を参照)。

海南市黒江の雁行型の町並みの様子
雁行型の町並みの様子(黒江ワイワイ連絡協議会のHPより)

鋸歯形の活用の例
鋸歯形(三角部分:上図のグレーの部分)の活用の例 

 しかし現在、景観条例制定や行政による技術指導などの対策がなされない中、漆器業の変換とともに伝統的な町家は少なくなりました。町並みの連続性は崩れ、老朽化のため無秩序な建て替えが進み、さらに空き地の増加などにより、従来の景観が失われつつあります。住む人は維持管理や老朽化の問題に直面 しており、修復について具体的な情報は乏しく行政のサポートもありません。

 今回交流を行った「黒江ワイワイ連絡協議会」は、本活動の発起人となった和歌山信愛女子短期大学助教授の千森督子さんを始め、孤立している伝統的な町家の保全・再生の専門的な知識や技術を持った熱意ある建築家や建築修復技術者、施工業者、研究者間のネットワークを形成し、伝統的景観の維持発展と町家再生を目指した活動を展開するために1998年に設立されました。
 交流会ではお互いの会の活動目的と今までの報告会や自己紹介を通じて活動に対するおのおのの考え方を知ることができました。そして活動自体の地方行政への働きかけ方や条例の遅れ対策、その難しさやネットワークの強化について話し合いました。
 また住 民側の意識として、町家スタイルは京都にも立派なのが多く点在している、という点が挙げられましたが、黒江の住民が地域の良さに気付き、誇りを持って住み続けることが大事であることが分かりました。

 現地見学会では町の成り立ちを聞きながら散策し、漆器関係施設、民間ミニ博物館を観光しました。まず町家再生先駆例の「黒江ぬ りもの館」(昭和63年住民開設)を訪れました。ここは江戸末期からの空き家を改造した漆器直売店で、新しく生活提案される漆器の話が聞け、漆器産業も移り変わっていることが分かりました。
 次に黒江の町を東西に220m続き、昔は漆器の運送水路であった川端通 りに面する、「黒江のあがえ(我が家)」を見学しました。ここは江戸末期から明治期に漆器業者の新宅として建てられた町家で、本瓦・庇・格子・大戸・と内部の田の字型間取り・通 り土間・帯戸など、黒江の伝統的な町の家の特徴を備えています。千森さんが近年様々な団体が町並み保全運動を展開する中で、なんとか自分の力で町並み保全に参加する方法はないかと模索した結果 、ここを芸術家の作品発表や定期市を通して一般に開放し、文化発信基地として再生するという試みで、町のキーステーションになっています。長年の空き家で痛みが目立ったことから、取り壊しを考えたことがあった家主の方は、千森さんの熱意に答え無償で提供されました。
 最後に、池庄家漆器店再生計画に立ち会うことができました。町家に増築した家のプランで、町家は老朽化で柱が少し傾いていました。設計案の検討では、内部の再生について重点が置かれ、そのまま復元し、昔の生活スタイルに合わせるか、現代に合わせて、近代的にするという2点が挙げられました。しかしそこで時間が来てしまいました。

「黒江ワイワイ連絡協議会」の皆さんといっしょに
「黒江ワイワイ連絡協議会」の皆さんといっしょにプランの検討をしました

 今回、黒江地区の保存活動の一部分でしたが行動を共にして、町家というだけで随分横浜とは違う点が大きい気がしました。町家の住居は周囲との繋がりや統一感、賑わいのある街路地、密度が高いだけにそれが美しいし、それを生かした住居の内と外の繋がりなどが特徴的です。しかしその伝統が失われることにより、黒江の財産が余計際立って写 りました。 住居が再生されても住民の方の住み心地が良くなければ、活気も薄れて町家も死んでしまうし、何を見直したのか分からなくなってしまいます。なにより黒江のあがえを通 し、新しい利用の仕方や、より多くの住民の方が参加をされることが大事であると感じました。

黒江塗りの体験
職人さんの指導で黒江塗りの体験もしました

 
 
 

このページの先頭へ